メタバースとは何か

『メタバースとは何か』岡嶋裕史(著)

書評
執筆責任者:chiffon cake
最近になって友人がOculus(VRコンテンツを利用するためのデバイス)を買ったらしい. ちょうど筆者が大学生になった頃から話題が上がり始めたのを覚えていた. またちょっと前にFacebookがMetaへ社名変更すると共にメタバースというキーワードが取り上げられていた. 筆者が情報工学分野を専攻することもあり, いまさらになって本書を読んで知ろうとしたのである.  メタバースは広い意味と狭い意味として使われることがあり, 本書ではそれぞれを, ミラーワールド(ARなど主軸である現実世界に膨らみをもたらすコンテンツ)と, 完全な仮想現実=メタバース(VRと呼ばれるコンテンツ)とに分類する. その上で今日までの歴史的発展, 現代社会における意味, 著者の未来予想を述べている. 本書の核心として, 現代人が抱える深刻な不安ー他者との衝突ーがある. (社会的格差に触れている部分も大いにあるが, 本筋はこちらであると読み取った.) なぜならそれこそメタバースに人々が魅せられる理由であり, メタバースが目指すであろう形(少なくとも著者はそのように考えている)を示唆している. たとえテックジャイアント(GAFAM)の手の上で飼われるとしても, 他人と衝突しない, 快適な世界が提供される, それなら喜んで一生を過ごすという現代人の心理である. これが本文全体の骨格を生んでいる. もちろんビジネス的な観点も提供している. 冒頭ではメタバースの必然性を説明している. これは情報化社会で海賊版をはじめとするコピーが氾濫するようになったせいであり, オリジナルが売れなくなれば”モノ”(データ化可能なモノ)が売れなくなる. 代わりに一度きりな”体験”を提供するサービスが売れるようになる. 最後にはGAFAMそれぞれのメタバースへの取り組みについて, 大きくページを割いて紹介している.
(792文字)

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