『医学とはどのような学問か』杉岡良彦(著)
書評
執筆責任者:コバ
私含め、日常、医療分野に従事していない人々にとって医学は病気になった時にお世話になるものである。或いは病気の予防のために定期検診等でも医学にはお世話になるが、そのいずれにしても「医学とはどのような学問か」ということを、医療を受ける側の我々が考える必要性は低い。医療を受ける側にとって重要なのは医学、医療によって「病気にならない、病気が治ること」であって、医学そのものがどのような学問であるか考えること自体はその重要な「病気にならない、病気が治ること」と直接の関係は無いからだ。物事の本質を掴もうとする、そういった「思考」では病は治せないし、私も病気になったら病院で医療のお世話になる。しかし、それでも私は本書を医療を受ける側の人々に紹介したい。日頃私たちの身近にあるもの、環境、制度、そういったものを「ただあるから、それはそういうものモノだから」と言って鵜呑みにせず、一度自分自身で考えてみることをして欲しいからである。何事に対しても思考する余地を残しておくことで、物事への対応の柔軟性を身につけることができる。そして本書はそういった私含めた医学に関して門外漢な人々に対しても「医学」そのものについて考えさせてくれる。本書の内容についてだが、本書はわかりやすい「答え」のようなものは用意していない。医学についての諸問題、諸事態についてまず知識として我々に入口を開いてくれ、そこについて深掘りし過ぎずに検討の可能性を置いておいてくれる、筆者はそんなスタンスで読者に語りかけてくれる。自分の専門外のことに対して我々が思考しようとする時、その全体像を把握することは骨が折れる。特に「医学」のようにハードルの高い内容になれば尚の事だ。その時に焦って分かりやすく、自分にとって都合の良い内容に飛びつかず、専門家の力を借りながらじっくり思考してみる。本書はそんな姿勢を持とうとする読者の心強い味方である。
(796文字)
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