『正欲』朝井リョウ(著)
書評
執筆責任者:Daiki
《人間はずっと、セックスの話をしてる。その存在に気付いてからは、何歳になっても永遠に。》私は“セックスの話”に対する好奇心が強い。本書を読んだのもそれを読みたかったからであるが、私のように題名だけで引き寄せられる、いわゆるそのような話が好きな人に本書をおすすめできるかどうか聞かれたら、読んで確かめて欲しいと答えようと思う。セックスの話であり、セックスの話ではないからだ。『正欲』。正しい欲とはなんだろう。思いもよらない「もの」に興奮する人を「多様性」と認めることができるだろうか。冒頭の文は本書に登場する女性の言葉である。それぞれの生きづらさや寂しさを抱えた登場人物たちが悩みながら生きていく姿をそれぞれの登場人物目線で描かれている。私は“マイノリティ”では無いので、その意味での生きづらさはあまり感じたことがないが、もともとあった「性」への興味がより一層深まった。本書は、「生きることと死ぬことが目の前に並んでいるとき、生きることを選ぶきっかけになり得るものをひとつでも多く見つけ出したい」という想いのもとに書かれた本であるので、“マイノリティ”の人にとって救いになる本かもしれない。私が好きなものをあなたも好きとは限らない。今の時代「性」について語ると「多様性」がなんだと叩かれる可能性があるので、マジョリティ側にいても怖くて発言できない人が多いように思う。それによって、そもそも何も考えないという人や決めつけてしまう人がさらに増えていくかもしれない。考えた先の自分は、今の自分と根本から変わってしまっているかもしれないが、あなたがそんな恐怖にも打ち勝つほど“考えたい”思いが強い人なら、この本をぜひ手に取って読んで欲しい。読んだからには考え続けなければならない。
(735文字)
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