悪文 伝わる文章の作法

『悪文 伝わる文章の作法』岩淵 悦太郎 (編集, 著)

書評
執筆責任者:チクシュルーブ隕石
文章という形態は、年齢や立場といった各人の持つ属性や時代・時間などを超えて伝達が可能であるために、古くから現在に至るまで使われて続けてきた。当然現代に生きる私たちも例外ではない。私たちは他者に自らの思いを伝えるために言葉を紡ぐ。さて、ここで考えなければならない事は文章をどうやって相手に伝えるかである。書きたいアイデアがよく練られたものであったとしても、文章の伝え方が良いものでなければ筆者が意図した形で伝わるとは限らない。そういった点で、伝えたい事を伝えることは文章を書く上で重要になってくる。本書『悪文-伝わる文章の作法』では、悪文とされる文章を例にしながら悪文となるのを回避する術を説明している。本書は1979年に発行された本であり、我々の生きる現在から見ればかなり堅い本ではあるが、現在の文章にも通じる事柄が多く紹介されている。目次には「構想と段落」や「文の筋を通す」など、文章を書く上でごく基本的な要素が書かれているが、本書中で扱われている文章を読んでみると基本的な要素を押さえられていない為に意味を理解することが難しい「悪文」が散見される。また、アナウンスとして用いられる文章についての記述も興味深い。視覚情報として処理される文章であれば理解できるものであっても、適切な対比やグループ分けができていなければ文章をアナウンスされた時に理解が難しい。このように、本書中では様々な場面で想定される文章について例が挙げられているため、実際に文章を書く際の助けとなることが期待できる。言葉とは、時代の移り変わりとともに意味や使用の用途なども常に移り変わる運命にある。しかし、良い文章を成立させるための要素の根幹の部分はそう簡単に変わるものではない。本書を読むことで、私たちは日本語という言語をどのように使い、表現をしていくべきかということを考えるキッカケにしていただけるとありがたい。
(793文字)

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