ミミズによる腐植土の形成

『ミミズによる腐植土の形成』ダーウィン(著)渡辺政隆(翻訳)

書評
執筆責任者:たろ
1881年に出版された本書では地表を覆っている腐植土の形成にミミズがいかに貢献しているかというテーマを、ミミズの習性、運び出す土の量、古代建造物の埋没や土地の削剥における役割などから、ミミズを自ら飼育し家族の協力を得ながら観察分析した結果が詳細に記されている。ミミズには眼はないが明かりに対する感受性はある。聴覚はないが触覚は発達している。嗅覚は弱いが味覚は有している。このように感覚器官は万全ではないにも関わらず自ら掘ったトンネルの内側を葉や糞で裏うちしたり、糞を高く積み上げたりする技量を持ち合わせ、また、ミミズの巣穴の入り口を葉や葉柄や紙で塞ぐ時に見せる複雑な行動が人間が同様に穴を塞ぐ時とほぼ同じことから知能を有していると結論づけている。ミミズは石灰腺という大量の炭酸石灰を分泌する器官をもっている。ミミズのいる土壌は肥沃だと昔から聞かされていた。土いじりが好きな人にはお分かりかと思うが土づくりには消石灰などの石灰分を施して土壌のpHを弱酸性に中和させることがよく行われるが、なるほどと納得した次第である。ミミズの生息している土壌はすべて一旦ミミズの体内を経て形成され、今後も繰り返されると聞くと恐れ多くなってくる。咀嚼器官をもたないミミズは食物と小石などを取り込み砂嚢でその小石を石臼のように使い機械的にすりつぶし排泄し、排泄された糞塊は毎年0,2インチ(約5㎜)の土壌の厚みとなり地表面にあるものは徐々に埋没していくということである。また、その排泄された糞塊が雨風で流されることで長い時間をかけ地形が形成されることや糞塊のおかげで古代建造物が地中に埋まり安全に保存されていたことにも驚いてしまう。ダーウィンのミミズに対する情熱に感服しつつ、今後ミミズに対し敬意をもって接していきたいと思う。
(752文字)

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