センス・オブ・ワンダー

『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン (著), 上遠恵子 (翻訳)

書評
執筆責任者:コバ
レイチェル・カーソン。彼女の名前を知っている方は多いだろう。1940年代から各地で広く使われ始めたDDTという殺虫剤、この大量の散布により野生動物へ悪影響が出ていることを1950年代に入ると一部の生理学者達は気付きはじめていた。彼ら生理学者達と連絡を取り合いながらレイチェルは「沈黙の春(Silent Spring)」という題名でこの事態を一般向けの書物としてまとめあげ、社会に告発した。それは後に「歴史を変えることができた数少ない本の一冊」として称されることになった。その彼女の最後の作品が本書である。本書は「沈黙の春(Silent Spring)」のような環境問題を取り上げるという内容ではなく、レイチェルの姪の息子(ロジャー)との生活の中での自然との触れ合い、自然の中での体験の素晴らしさ、喜び、そういったものがレイチェルの飾らない言葉で綴られている。その中にはロジャーに対する彼女の深い愛も感じられ、読者は読後、暖かい気持ちになれる本と言えよう。また本書は訳者あとがきの後に「私のセンス・オブ・ワンダー」として4人の方々の本書から受けた影響や各自の体験が綴られているのだが、これが白眉。4人の方々の職業や立場は様々であるがどの方も本書やレイチェルに対するリスペクトが感じられるし、各自のセンス・オブ・ワンダー(本書では、神秘さや不思議さに目をみはる感性と訳されている)体験の語りから自然とその人の人柄が伝わってくるようである。レイチェル・カーソンは生きていた時代も育った国も私とは違う。しかしこの「私のセンス・オブ・ワンダー」を書いた4人の方々のように、私も本書を読むことで私自身の「センス・オブ・ワンダー」に出会うことができた。私が本書に出会ったきっかけはジェイラボの仲間からの紹介であった。本書を紹介してくれた彼に感謝したい。
(769文字)

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ジェイラボ
基礎教養部

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