『鳥の不思議な生活』ノア・ストリッカー(著)片岡夏実(翻訳)
書評
執筆責任者:たろ
野鳥の不思議な生態を様々な研究を通して紹介している。著者は「鳥を研究することで、我々は最終的に自分自身を知ることができる」という考えの鳥オタクだ。本書で紹介されている13種類の中には日本に生息していない鳥もいるが、日常何気なく見ているだけの鳥に新たな視点を与えてくれる。「愛と貞操」「利他的行動」「つつき順位」「空間記憶」「音楽にあわせてダンスする」「自我と他者理解」「モテるためのアート」などの行動は人間との類似点も多く興味深いものがある。「序」にも書かれているが、近年は動物行動についての科学的な考え方の変化で、人間の独自性ということより、ヒトという動物と他の動物との共通部分に焦点があてられることが多いとのことだ。人間の同様な行動も本能的なものであることが研究で明らかになってきており、結局は生存に有利であるように徐々に進化したもので、ヒトと他の動物とのギャップは双方から縮まってきている。本書の最終章はアホウドリの愛や絆について。アホウドリの離婚率はほぼゼロであり、逆にフラミンゴは99%の離婚率。野鳥では外父性はよくあるがこの率もアホウドリは低く、優等生として記されています。「人間より素晴らしいではないか」と大多数が賛美を送ると思われるが、私はすべてに賛成はできない。鳥の性格はわからないが、人間から見ると鳥はどれも同じ顔に見える。逆に鳥からは我々がどう見えてるかはわからないが、人間は千差万別だ。外観も性格もいずれ変わってくる。結婚から20年たつと愚痴も言いたくなるがやめておこう。ただ、本書は著者自身のフィールドワーク以外の物理学やゲーム理論などを織り交ぜながら鳥への愛に満ち溢れている。鳥の中の人間性について、またはその逆について、いろいろ考えさせられる本である。
(741文字)
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