部下を育ててはいけない

『部下を育ててはいけない』田端信太郎(著)

書評
執筆責任者:Takuma Kogawa
貴重な時間を投資することで、リターンがありそうな見込みのある部下と、見込みのない部下を「選別」し、ダメな部下は組織内でほかの良い人材と取り替えるべきなのである、と筆者はまえがきで主張している。多くの人にとっては手放しで賛成できるような意見ではないだろう。本書は、組織のトップ層ではなく中間管理職クラスのリーダーが部下をどのようにマネジメントして成果を出すかという方法を、筆者の経験をベースに述べられたものである。リーダーの責務は上司や組織にやみくもに忠誠を誓うことではなく、自らのチームが成果を出すために何をするべきかを考えて行動することであり、そのために部下が動きやすい環境を整えることが仕事の一つである。冒頭の主張はこのような筆者の考えがベースとなっている。部下の管理ばかりしているリーダーは、組織全体からみると不要な存在かもしれない。部下が困っていたら、問題を解決しうるアドバイスをするのがリーダーの役割であり、一挙手一投足を管理することはチームやその部下にとって必要でないならやらない方がよい。環境を整備して部下が自由に働く様子をみて、それでも組織にあわない人員がいるならばその人を異動させることが組織やチームの改善策のひとつになる。異動させることそのものが目的なのではなく、組織としてよい成果を出すための方法にすぎないことに留意する必要がある。自ら動く人間が集まると、ただの仲良しではなく協力しながらも意見を戦わせて、よりよい方向に一致団結することが期待されるだろう。ザ・ビジネス書といった本書のまえがきのパンチにひるまされるが、逆張りや突飛な内容ばかりが並んでいるわけではなく、自然と受け入れることのできる意見もあり、思ったよりも収穫はあった。学生が読むことは必須ではないが、多くの企業の役員を渡り歩いたクセのある人の考えをのぞいてみるのには、本書は入門としてよいかもしれない。
(795文字)

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