『アクティブラーニング』小針誠 (著)
書評
執筆責任者:シト
今回私が選んだ本は『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』という本です。本書のテーマにある「アクティブラーニング」は新時代の教育方法として、数年前に学校教育界のみならず様々な業界で広まった教育用語です。みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。この「アクティブラーニング」に代表されるように、日本では歴史的に魅惑的なというより胡散臭いカタカナ教育用語に振り回されてコントロールを失うことがつづいてきました。学校現場において「アクティブラーニング」は、「座学はダメ」であり「体験が大切」であるといったように単純化して誤解されました。本書ではそれを「幻想」と表現しています。そして、次第に「活動あって学びなし」と揶揄されるようになりました。このようにして、教育用語としての「アクティブラーニング」は今ではもう旬が過ぎてしまったと言えます。では、今、教育ではなにが行われているのでしょうか。そこで出てくるのが、「主体的・対話的で深い学び」です。これは、「アクティブラーニング」を発展的継承させた用語です。本書では、これについても同じ轍を踏む危険性があると指摘しています。つまり、現在も漂い続ける「アクティブラーニング」の幻想が、学芸会型の教育方法だけを「学び続ける教員」を量産させることによって、その結果として、教育内容について「学び続ける教員」の意欲は下降の一途をたどっているということです。学校教育に携わるすべての人が本書を手に取って、「主体的・対話的で浅い学び」に陥ることを未然に防いでほしいと願うとともに、他の業界の人にも手に取ってもらい、似たような轍を踏まないようにしてほしいと思います。
(701文字)
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