『第四次産業革命と教育の未来』佐藤学(著)
書評
執筆責任者:ingen
著者は2016年の世界経済フォーラムで「第4次産業革命」という言葉に出会ったことがきっかけとなり、IT産業と境域産業と公教育についての本の執筆を意識し始めたという。未来の教育を語るうえでICT教育は必須のアイテムだ。一部では「未著者は2016年の世界経済フォーラムで「第4次産業革命」という言葉に出会ったことがきっかけとなり、ICT教育に関する本の執筆を意識し始めたという。未来の教育を語るうえでICT教育は必須のアイテムだ。一部では「未来の教育=ICT教育」という考えが常識になっている。著者から見るとそれは「ICT教育の神話」に過ぎないという。一方で日本政府はICT教育によってここ30年で失われた競争力を取り戻そうとしている。その試みはうまくいくのだろうか。海外ではビックデータとAI技術を背景とした「個別最適化」を中心に進められそれを補う形で「協同学習」も同時に行われている。日本では個別最適化を取り入れようとしている段階、というのが現状だ。著者はICT教育自体は否定しないが、現在行われているやり方には疑問を呈す。ICT教育が浸透しているニューヨーク市では、テストによる過度なデータ収集やICT教育により教員が解雇されることに対するデモ活動が行われている。デモに参加した子供たちは「I am not a test score. I am a Catherin.」というプラカードを掲げていたという。著者はこのプラカードに現代の教育の危機の本質があると直感したと語る。海外で進められるICT教育には教育企業、TI企業、国際機関などで構成された利益でつながったグローバル・ネットワークがかかわっている。彼らは「博愛主義」を標語に事業を拡大し続ける。著者は今起こっている資本とテクノロジーの暴走は、子供の人としての尊厳を破壊していると語る。「学ぶ権利は子供の希望の中心です。しかも学ぶ権利はあらゆる人権の基礎です。学びの権利をはく奪されるとほかのあらゆる権利へのアクセスができなくなります」という著者の言葉がある。教育は子供の学ぶ権利のために行われてほしいと思うのは学生の甘い考えだろうか。
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