食べるとはどういうことか

『食べるとはどういうことか』藤原辰史(著)

書評
執筆責任者:ていりふびに
今回私が紹介する書籍は藤原辰志著「食べるとはどういうことか」である。著者の藤原辰志は農業史の研究者であり、本書は子供たちと著者の「食べること」に関する座談会の記録をまとめたものである。この座談会は「今まで食べた中で一番おいしかったものは?」、「食べるとはどこまで食べるのなのか?」、「食べることはこれからどうなるのか?」という三つの問いについて議論しながら進んでいく。最初の問は何気ないものだが、考えてみると「おいしい」は一筋縄ではいかないことに気付く。単純に味だけでなく「誰と食べたか」、「どこで食べたか」も重要な要素なのだ。そもそも「おいしい」とは、「食べる」という栄養補給に必要なのか。「食べる」は単なる「栄養補給」を超えているのだろうか。この本には「あたりまえ」を改めて考えさせられる。また、座談会では何度も「哲学」という言葉が出てきている。というのも、著者は「あたりまえ」を考えることを「哲学」と考えており、毎日関わる「食べる」を改めて問い直すことは正に「哲学」というわけだ。ただ、「あたりまえ」を考えるには、何が「あたりまえ」かを考える必要がある。「あたりまえ」のことは意識できないから「あたりまえ」なのだ。偏見で固まった頭ではそうそうたどり着けない。私も「食べるとはなにか」ということが気になって、この本を手に取り、座談会に参加しているつもりで考えながら読み進めていったが、子供達の意見や疑問が私よりもシンプルで偏見のないことを感じた。この本は「食べる」について問うているが、この「あたりまえ」を問う姿勢は当然「食べる」ことのみに限られない。多くの人が子供たちの議論を通して、自分の偏見の多さに気づかされるだろう。「自分には偏見がある」ことも「あたりまえ」である。
(739文字)

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