インターネット的

『インターネット的』小川 和人 (著)

書評
執筆責任者:イヤープラグさざなみ
「予言の書」と紹介されているのをよく見かける。本書が書かれたのは、インターネットが普及して間もない1990年代後半。出版された当時は埋もれていたらしい。登場したてのインターネットに対して人々がまだピンときていなかったのかもしれない。それに、本書はインターネットを使った儲け方を紹介しているわけでもない。統計データをもとに予測を立てているわけでもない。著者糸井が自身の肌感覚をもとにインターネットについて綴ったエッセイである。全く古臭さを感じないのは、内容が普遍的で抽象的であるからだろう。「インターネット的」な考えには三つの軸があって、それが「リンク」「シェア」「フラット」である。リンクとは、複雑な情報同士のつながりのことである。一見関係なさそうな情報同士がつながっていることによって、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な連鎖が起こりやすくなっている。フラットは言い換えれば「無名性」である。情報のやり取り自体に意味があるため、「ポジション」の意味が失われていく。シェアは説明するまでもないだろう。インターネットと「インターネット的」の違いを、糸井は自動車とモータリゼーションの違いになぞらえて説明する。モータリゼーションという語は、自動車が発明され、それが社会に浸透する中で起こった変化すべてを指す。車庫ができたり、物の運び方が変わったり、遊び方が変わったり…。それと同様に、インターネットの普及に伴って、それまでにはなかった新しい考え方が登場する。それが「インターネット的」な考え方である。いや、それまでになかったと言うと語弊があるかもしれない。モータリゼーションに自動車は不可欠であったが、インターネット的であるためにインターネットは必要ない。「インターネット的」な考え方は応用が効く。きっとあなたの考えともリンクすることでしょう。
(764文字)

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