『武道論』内田樹 (著)
書評
執筆責任者:シト
今回、私が紹介する本は『武道論 これからの心身の構え』です。武道と聞くとみなさんはどのようなことを考えるだろうか。武士道に由来している日本の中で体系化されたスポーツといったような武道の意味であったり、柔道、剣道、弓道、相撲、空手、合気道などと言った名前といったようなことが大半ではないだろうか。そんな中、この本は武道とは「天下無敵」を目指すものだと言っている。どういうことか。敵をすべて叩きのめすことによって害をすべて排除するということだろうか。そんなわけがない。書いてある通り、天の下に敵がいないということを意味している。つまり、そもそも、敵などいないという状態を目指すということだ。こうなるには、すべてが敵であるということを認識しなければならない。目の前にあるドア、壁も自分の進行を妨げる敵となる。しかし、普段そのように考える人はいないだろう。なぜなら、ドアは開くことができるし、壁は迂回すれば突き当たることはないからだ。つまり、工夫をすればいいのだ。何事にも工夫することで敵性を解除していき、それを繰り返すことで敵がいない状態へと向かっていくこと。それが武道だというのだ。だから、内田は政治、教育、能楽などといったことにまで口を出している。この本は完全書下ろしではなく、講演、ブログ、様々なメディアで出したものを集めたという設計となっている。そんなこともあって似たような話が何回も出てくる。もういいよとなる人も多いだろう。だが、この本は武道論である。すべては武道とつながっているのだ。これをぜひ常に意識してほしい。この本を読み進めること自体が、武道における稽古のようなものなのだ。読みながら稽古を体験してみたい人にはぜひおすすめしたい。また、“役立つ”視点もあるので、読んで損はない本だと私は思う。
(751文字)
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