22世紀の民主主義

『22世紀の民主主義』成田悠輔(著)

書評
執筆責任者:YY12
この著作を手に取ったのは、最近よく言われる「民主主義の危機」とやらに興味があったためである。コロナウイルスにより、世界のトップを走るアメリカが多数の感染者・死者を出す一方で中国などの権威主義国家はこれを比較的抑え込めたと言われている。また、本書において「民主主義的な国ほど、今世紀に入ってから経済成長が低迷し続けている」データもあるという。正直言って私はこれらのデータによる主張が正しいのか判断出来ない。しかし、少し世間に耳を傾ければ民主主義の弱体化の声は聞こえてくる。今まで至高だと思っていた政治形態に疑問を持ち始めているのは、恐らくそれなりには社会の変化だろう。学校の噂話のように一瞬で流れる気の迷いなのか。それとも、これを機に「新しい姿」へと変っていく始まりなのか。本書はそれを民主主義の根幹ともいえる「選挙」に焦点を当て考えていく。思えばこれだけテクノロジーが発展しているのに、例えば日本のような先進国でも「数年に1回投票所に行って、思い出したように赤の他人の名前を書く」という形式は変化していない。著者の成田氏は選挙は民意を収集するただの1つの手段でしかないとし、デジタル的な手段を用いてあらゆるところからそれらを集めようという。そこに行き着くまでの細かい話は、是非本書を読んで確認して欲しい。そして、テーマとして「民主主義」に興味があったこととは別に著者の成田悠輔氏にも興味があったという話もしておきたい。興味とっていても「大衆にウケる人間の本を読んで、見方を広げたい」と思った程度だがこれについても感じるものはあった。大衆受けする人や本がどういうものなのか大体分かるかもしれないが、具体的な事例を読んでみるとさらにイメージがくっきりする。大衆向けだから悪いなんてことはないが、そこの反対側にあるより深いものに立ち入って行こうとする時、もう片方の端を知っていることはきっと役に立つ。
(797文字)

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