『愛するということ』エーリッヒ・フロム(著)
書評
執筆責任者:ていりふびに
今回私が紹介する書籍は、エーリッヒ・フロム著『愛するということ』である。このタイトルを見て恋愛のハウツー本だと誤解する人もいるだろう。しかしこの本にはデートの場所、プレゼントの選び方などといった具体的な恋愛の技術については全く書かれていない。本書に書かれているのは「愛する技術」である。フロムは「愛は誰もが簡単に浸れる感情ではない」と断定し、「愛する」ためには「愛」の理論に精通し、修練を積む必要があると主張する。多くの人は「愛」は生まれつき備わっており、努力は必要がないと考えているであろうから、この主張は新鮮で興味を引くものである。また、本書のもう一つの特徴は「資本主義」によって人々が「愛する」能力を失ったと論じている点である。資本主義では市場原理に基づき、全ての商品を市場の条件によって交換する。このような社会の中で生きる人間はパッケージ化され、商品と同じように自身を交換しているというのだ。実際、現代では年収、学歴、地位などのステータスによって「愛する」対象を選ぶ人も多いだろう。しかし、それは本当に「愛する」相手なのだろうか?本書はそう訴えてくる。「現代」という言葉を出したが、この本が書かれたのは60年以上も前のことである。しかし、現代でも「愛」に関する問題は多く存在する。ましてや資本主義が進んだ現代ではより一層「愛する」ことは難しくなっているだろう。そういった状況下で本書を読む価値は大いにあるはずだ。当然、「愛」に悩みなんてないという人も多くいるが、そういう人こそ是非読んでみてほしい。今までの「愛」に対する考え方が大きく変わるに違いない。さて、本書を薦めたはいいものの読み通すには集中力や思考力が必要なので途中で諦めてしまう人もいるかもしれない。だが諦めないで粘り強く考えてほしいと私は思う。「愛する」には修練が必要なのだから。
(775文字)
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