『読書について』ショウペンハウエル(著)
書評
執筆責任者:YY12
このサイトをご覧になっている方は、勉強熱心な方であり、読書に関しても少なからぬ関心を持っている方だと思われる。しかし、皆さんは「どのように」或いは「なぜ」読書をしておられるだろうか。恥ずかしい話だが、平均寿命の4分の1程になってようやく人並みに読書するようになった私はここで引っかかってしまった。メモや簡単な印などの小さな工夫は出来ても、その基本となる「読書をするうえで持っておくべき基本的な姿勢」、「そもそもなぜ読書をする必要があるのか」といったようなことはピンとこなかったのだ。思えば、学校では「本を読め」「知識をつけろ」とは声高に言うくせに、その方法論においてはかなり秘密主義的であったように感じる。こういった背景には、おそらく技術や方法に対する冷たい視線やそれゆえの無知があるのだろう。確かに、いわゆる受験的で、機械的な技術を押し付けて、個人の感性や読書の素晴らしさを切り刻むようなものは私も良く思わないが、やはり本書に書かれているような「基本的な姿勢や考え方」は一度触れておいて損はない。本書は「自分の頭で考える」、「著述と文体について」、「読書について」の三つの小編から構成されており、ショーペンハウアーが6年間にわたって書き綴った大小さまざまなエッセイの集大成『余禄と補遺』から訳出されたものである。彼の主著『意志と表象としての世界』は、当時ヘーゲル哲学が風靡していたドイツにおいては見向きもされなかったが、このエッセイ集はたちまちベストセラーとなり、彼の思想体系全体に関心を集めさせるきっかけになった。彼の「人や社会に対する鋭い洞察」は、当時の人々に強い刺激を与えたが、現代に生きる私達にとっても学ぶべきところは多い。本書は全体でも130ページほどであるし、話の肝である「自分の頭で考える」と「読書について」は合わせても40ページほどである。気軽に手に取って読んで頂きたい。
(795文字)
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