『星の王子様』サン=テグジュペリ (著), 河野万里子 (翻訳)
書評
執筆責任者:コバ
本書「星の王子さま」は初版以来、200以上の国と地域の言葉に翻訳されており、出版部数は日本だけでも600万部、全世界では8000万部にものぼると言われているあまりにも有名な本であると言えよう。著者はサン=テグジュペリ、フランス人の作家である。まず本書を読んで驚かされるのはその内容の普遍性の高さである。この物語の中では王様、うぬぼれや、ビジネスマン、バラ、キツネ、ヘビ、そういったたくさんの人、動物、植物が登場する。彼ら、彼女らはそれぞれの主張を持っており、それを星の王子様に語りかける。その主張は大方の場合一見するとおかしな主張ばかりなのだがその主張に対しての星の王子様の感じ方や返答があまりに純粋で、最初はおかしいと思っていた王様、うぬぼれや、ビジネスマン達は実は自分自身だったと読者は気付かされていく。海外作家の著作に求めるものは人それぞれであろうが、国を超えたメッセージが発信者と受信者の間で共通性を持つためにはある程度の抽象度の高さが必要である。本書は童話という範囲を逸脱せずにかつ抽象度の高さを要所で維持するという芸当を行なっており、それが世界各地で老若男女問わず読まれ続けている理由であろう。そして本書では「物事は偏見を捨てて見なければならない」「環境問題」「本当に大切なものは目に見えない」この3つのメッセージが物語の軸を担っている。どのメッセージも現代に通じるものばかりで本書が国だけではなく時代も超えて読み継がれているのはこの点によるものだろう。つまり、本当に大切なものは国や時間を超えて伝わっていくということなのだろう。そして国も時間も目に見えない。なるほど、確かに本当に大切なものは目に見えないようである。
(715文字)
追加記事 -note-
コメント