脳を鍛えるには運動しかない!

『脳を鍛えるには運動しかない!』ジョンJ.レイティ (著), エリック・ヘイガーマン (著), 野中 香方子 (翻訳)

書評
執筆責任者:蜆一朗
本書は、学習やストレスなどの観点から運動が脳に与える影響を解説するものである。各章の冒頭で、何かしらの問題・症状を抱える人が運動によって快方に向かったエピソードが紹介される。その後、脳の構造を含めて脳内物質がどのように作用するのかといった医学的な見地からの解説が入り、ラットでの実験および人間を対象とした研究結果が紹介される。専門用語に関する予備知識が必要であり、エビデンスの強固さにやや穴があるようには思われるものの、誰しもがぼんやりとは理解しているであろう「運動をすると頭がスッキリして気分が良くなる」という感覚が科学的に見ても妥当なものなのだと感じられるためには充分であろう。それでいて各章の最後には具体的にどのような運動が効果的なのかを紹介するパートもあり、運動に対する最初の一歩を踏み出せずにいる人の背中を押してくれるため、理論派の人も行動派の人も運動に対して前向きになれるだろう。また、本書は各章ごとに1つずつ、脳の問題に由来する病状を紹介する構成となっており、鬱・注意欠陥障害・依存症といった精神疾患や、ホルモンバランスや加齢などの生きていく上で避けられない問題も採り上げられている。そのため自分が興味を持った章だけ拾う読み方も可能であり、3センチ以上あるボリュームに怯む必要はない。もちろん、通読することによっても、運動がもたらす効果の凄みや幅広さがより深く感じられることだろう。医学・薬学的に有効とされるさまざまな治療法に比べても、脳をフル回転させるさまざまな知的活動に比べても、脳への好影響という点についてやはり運動には敵わないと言える理由とは結局何か。それは自己コントロールが可能な点に尽きる。自分で自分のことを改善させられる。自分次第で未来を明るくすることができる。その肯定感からもたらされる自信が何よりの薬なのだ。運動を始めてみようと考えている人には是非一読を進めたい。
(798文字)

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基礎教養部

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