異世界はスマートフォンとともに。1

『異世界はスマートフォンとともに。1』冬原パトラ (著), 兎塚エイジ (イラスト)

書評
執筆責任者:西住
異世界はスマートフォンとともに。いわゆる異世界転生もののライトノベルである。ライトノベルも、異世界転生も、私が扱わなければ基礎教養部では永遠に扱われないであろう題材であるので、ここで一回取り上げておきたい。とはいえ、ライトノベルはまだしも、異世界転生ものについてはそれほど明るいわけではない(以前にこのすば、転スラ、リゼロなど異世界転生アニメのレビューをいくつか挙げたことがある程度)ので、初心者視点の記述にはなる。異世界はスマートフォンとともに。(以下異世界スマホ)は、私がなんとなく知っている異世界転生もののテンプレート通りに書かれた作品という印象を受ける。テンプレートから外れている要素は一つもないーあえて言えばスマートフォンが使えるくらいかーと言っても良さそうである。異世界スマホはまず主人公が死に、神様と出会い、特典をもらって異世界転生し、金策し、ヒロインと出会い、ギルドに登録し、神から与えられた特典で無双し、偉い人と仲良くなり、偉い人の娘と仲良くなる、というような展開で進む。詳しい人から見ると外れたところがあるのかもしれないが、初心者視点で見ると、これこそが異世界転生である、と言ってもいいくらいのテンプレートが揃っているように見える。そういう意味では教科書的な作品であるのかもしれない。異世界転生ってどんな作品? と問われた時に、この1冊を差し出すのはそう間違ってはいないと思う。作品は全てが主人公に都合の良い世界で、全くストレスなく、何も考えずに、サクッと読んで、あー楽しかった、となれそうなものである。読者に求められるものを100%提供していると考えると、完全にプロの業である。自分は独りよがりの文章を書いていないか、独りよがりの文章を書いた上に人に読んでもらいたいなどと思ってはいないか。そういう自省を迫る作品なのかもしれない。
(776文字)

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基礎教養部

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