『君たちはどう生きるか』吉野源三郎(著)
書評
執筆責任者:Daiki
1937年に書かれた本書は、今でも有名なので知っている人も多いかと思う。『君たちはどう生きるか』この問いかけに対して、あなたは何を思うだろうか。タイトルだけで私たちに「生きる」を考えさせる本であるが、「少年」向けに書かれているので、倫理の本としては読みやすい。主人公である中学生の本田潤一くん(コペル君)が日常で何か経験をし、その経験に対して叔父さんが彼に伝えたいことをノートに記す、そしてコペル君が「生きる」を考える、これを繰り返し、コペル君が成長していくという構成であり、章ごとの短編物語とノートの中で読者に「生きる」を伝えてくれる。コペル君の経験は、人間誰しもが通るあるある話なので、共感しやすく、コペル君と共に「おじさんのノート」を読み、考えた読者はきっと何か得ることが出来るだろう。ただ、「どう生きるべきか」具体的な答えを求めている人には、この本からの学びは何もないかもしれないことは警告しておく。「生きる」は誰かが教えてくれるものではなく、自分自身で考えなくてはならないのだ。コペル君のように、物事を考え抜いたことのある人や考えようとした経験のある人は、この世のものは思っているよりずっと根深いということを知っていると思う。一つ一つが根深いから、目を背けて上手く生きるというのもひとつの生き方かもしれないが、せっかくこの本を読むのなら「考える」という行為から逃げず、ぜひコペル君と「生きる」を考えていただきたい。なくなったコペル君のお父さんがコペル君に「立派な人間になってもらいたい」と望んだのと同様に、私も現代に生きる全ての人に対してそうあって欲しいと思う。そして、私自身も立派に生きたい。哲学や倫理の本としては比較的ライトであると思うが、本書が何か考えるきっかけとなってくれるのは間違いない。考えることはきっとあなたを立派にする。最初の一歩として本書を読んでみてはいかがだろうか。
(798文字)
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