『人生に生きる価値はない』中島 義道 (著)
書評
執筆責任者:シト
今回私が選んだ本は『人生に生きる価値はない』という本です。初めてこの本を見つけた時、挑発的なタイトルで驚く人は少なくないのではないでしょうか。しかし、著者自身もあとがきで述べているように、このタイトルが示す内容は一筋縄ではいかないものとなっています。ページをめくるごとに、読者は著者の深遠な哲学的思索の旅に引き込まれていくでしょう。この本には、人生にあらかじめ決められた価値や意味が存在しないという考えが書かれています。自分には、何か役目があるのではないか、このようなことを考えたことがある人は多います。そのため、これを聞いて絶望する人がいるかもしれません。しかし、著者は、この無意味さから絶望するのではなく、それを積極的に受け入れ、自らの価値を創造することの重要性を書いています。つまり、意味のないものであれば、好きなように自分で意味付けすればいいということです。また、著者は還暦を迎える頃から、「無が一番いい」という直観を抱くようになったと書いています。空間も時間も物質も意識も存在しない「無」の状態は、あらゆる苦悩や恐怖から解放される究極の安らぎを象徴していると言います。この本の良さは、独特な視点と、読者自身に深い内省を促す力強さにあるでしょう。筆者は、単なる哲学的な抽象論にとどまることなく、実際の人生に対する洞察を深め、読者に自身の視点を見せてくれています。特に、新生活などで人生に対する価値観が揺らいでいる人や、自己の存在意義を問い続ける人に読んでほしいなと思っています。この本は、人生の意味を求める終わらない旅において、非常に参考になる本だと思います。この本を通じて、自己の価値を自ら創造する勇気と、無の中に安らぎを見出す方法を知れたらいいなと思います。
(735文字)
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