コーチングの教科書決定版

『コーチングの教科書決定版』菅原秀幸(著)

書評
執筆責任者:Yujin
本書のタイトルにもある「コーチング」とは、能力開発の手法の一つである。その語源はスポーツなどでよく用いられるあのコーチであり、コーチはかつて中世ヨーロッパの交通の要所で馬車の産地であったハンガリーの地名コチが由来らしい。馬車は人を目的地まで連れて行くものであり、そこから転じて、人を目的(地)まで導くもの全般をコーチと呼ぶようになった。コーチングはつまり人を目的まで導くことあるいはそのための手法のことであると思われるが、実際のところ全世界共通の定義は今のところ存在していないようである。そもそもコーチングは自己啓発に端を発したものであり、今のところ「浅い」状態であると言わざるを得ない。本書も教科書を銘打っている割には怪しい結論と心意気(笑)にばかり焦点を当てられており、コーチングとは何か、どのような根拠に基づいているのか等々、いわゆる教科書に求められている情報は不足していると思う。それは本が物理的に薄いことからもわかる(電子書籍で読んだけど)。更にこの本の内容を浅くさせているのが、やけに多い権威づけと訳のわからない図である。有名な学者や起業家の名言の引用、「◯◯大学の研究によると〜」、それっぽいピラミッド構造の図等々。また、コーチングによってどれ程の効果が得られるのかについても具体的な指標は示されておらず、成功した起業家の名前を挙げたり、著者自らがコーチングした学生の意見を羅列するのみである。結局最後にはご自身が主宰するコーチング・スクールの宣伝で締め括られている(ご丁寧に公式HPへのリンクも貼り付けられている)。「コーチングの最もシンプルな定義は他己実現である」と言っておきながら金儲けが目的となってしまっている以上、この本は教科書を名乗るべきではないし、「コーチング」もビジネスの域を出ないものであると思う。コーチングで”成功”したい人に対してオススメできる本である。
(795文字)

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基礎教養部

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