ロボットとは何か

『ロボットとは何か』石黒浩(著)

書評
執筆責任者:Shun
今回私が紹介する書籍は、石黒浩著『ロボットとは何か』である。著者は人間酷似型ロボット研究の第一人者であるが、元々はコンピュータビジョン(コンピュータで画像を解析・認識させる取り組み)の研究していた。「コンピュータが人間と同等の認識能力を持つには、人間と同じように、環境の中で動き回り、物に触れる体が必要となる」という考えから著者はロボット研究を始めた。著者が開発した、自身をモデルにしたロボット「ジェミノイド」をメディア等で見たことのある人も多いだろう。本書はまず著者がロボット研究をしている理由、開発してきたロボットと研究テーマを順に紹介し、後にその詳細を述べていくという構成となっている。ロボットに人間らしい視覚機能を持たせることから始まり、ロボットの外見、機能をより人間に近づけようと開発を進めている。ロボットの技術的な面の詳細を述べている部分はそこまで多くはない。というのは、「あらゆることの基本問題となるのは<物事の起源>と<人間>しかない」という著者の確信から、ロボット研究を通して「人間とは何か」という哲学的な問いに対して一貫して考察しているからだ。著者が人間酷似型ロボットを作る理由も人間理解のためにある。人型ロボットのいる環境に人間が存在すれば、「人との関わり」が生まれる。本書に人とジェミノイドを使った興味深い実験結果があったので紹介する。ジェミノイド(人が遠隔操作している)の頬を突くと操作者がどうなるかという実験だが、結果は操作者も実際に突かれた感覚に陥った。中には異性の人間がジェミノイドに触れると、本気で興奮した操作者もいた。この結果の理由を著者は「人間の体と感覚は密にはつながっていない」からだ、と述べている。このように人とロボットを使った実験とその結果の考察が随所に見られ、ロボットの知識が無い人でも楽しめるような内容となっているのでおすすめしたい一冊である。
(796文字)

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